【確定申告シリーズ⑥】医療費控除

医療費控除 確定申告 医療費 質問BOX

質問:確定申告で医療費控除ができるかどうか、知りたい

  病院の領収書を一年間溜めました。これって確定申告して本当にお金が戻ってくるの?

答え:10万円を超えたら控除できます。所得が少ない方は、別の計算もできます!

  次の条件を満たせば戻ってくる可能性があります。
  「医療費(保険金等を引く)」から、「10万円」または「総所得金額等の5%」いずれか
  低い方を引いた金額が、控除額になります。

医療費控除の全体像

 医療費控除とは、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、所得から差し引いて税金を安くできる制度です。

▶対象期間: 1月1日から12月31日までに実際に支払った分

▶対象者: 自分自身、または「生計を一にする」配偶者や親族の分もまとめて申告OKです。

 ※「生計を一にする」とは、同じ家計で生活していることを指します。
  同居している家族だけでなく、仕送りをしている別居の親なども含まれます。

▶「支払った日」が基準:治療を受けた日ではなく、「実際に窓口でお金を払った日」の年の控除になります。12月末に治療して、支払いが翌年1月になった場合は、翌年分の申告になります。未払いの医療費は、その年には含められません。

▶計算のゴール: 「実際に払った医療費」から「保険金などの補填」と「10万円 または総所得金額等の5%のいずれか低い方」を引いた金額が控除額になります。

「10万円」だけじゃない?控除を受けられる金額の判定

▶原則:10万円
 年間の医療費(自己負担分)が10万円を超えた場合

▶所得が200万円未満の人:所得の5%
 その年の「総所得金額等」が200万円未満の方は、10万円に届かなくても「所得の5%」を超えていれば対象になります 。
 例: 所得が180万円の人なら、9万円(180万 × 5%)を超えた分から控除を受けられます。

 ➡10万円にいってないから無理だと諦める前に、まずはご自身の所得を確認してみてください。

これって対象?「OK・NG」具体例リスト

OK!:対象になるもの

  • 医師または歯科医師による診療・治療の費用:診察代、検査費、 処置料、入院費、手術費などが対象です。ただし、 健康診断や予防接種など「治療」でないものは含まれません
  • 治療のための薬代: 風邪薬など、治療に必要なものなら薬局での購入分もOK。
  • 歯科治療: 金やポーセレンなど、一般的な材料を使った治療は対象です。インプラントも、機能回復が目的なら対象です。
  • 通院の交通費: 電車やバスなどの公共交通機関の運賃
  • 入院中の食事代: 病院から提供される食事代は含まれます
  • 出産費用: 定期検診、検査、分娩費、タクシーでの緊急通院など。

▶NG!:対象にならないもの

  • 健康診断・予防接種: 病気の「治療」ではないため、原則NGです。
  • 美容・健康増進目的: 美容整形、歯列矯正(見た目を良くするため)、ビタミン剤の購入など。噛み合わせ改善など治療目的の歯列矯正は対象です。
  • 自家用車の費用 通院に使ったガソリン代や駐車場代は認められません
  • 身の回り品の購入: 入院用のパジャマ、洗面具、出前を取った食事代など。
  • 自分都合の差額ベッド代: 「個室がいい!」という希望で入った場合は対象になりません。医師の指示による場合は対象になるケースがあります。
  • お礼: 医師や看護師への謝礼金(心付け)は、治療の対価ではないためNGです。

介護、福祉サービスの費用の取り扱い

1. 介護保険施設の費用

 介護保険制度を利用して施設に入所している場合、その自己負担額(サービス費、食費、居住費など)の一部または全額が医療費控除の対象となります。対象となる主な施設は以下の通りです。

  • 介護老人保健施設(老健)
  • 介護医療院
  • 指定介護療養型医療施設
  • 指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
  • 指定地域密着型介護老人福祉施設

 これらの施設に収容されるための人的役務(身の回りのお世話など)の対価は、医療費控除として認められます。

2. 居宅サービス(在宅介護)の費用

 自宅で受ける介護保険サービスも、医療費控除の対象になるものがあります。

  • 介護保険制度の自己負担額: 訪問介護(ホームヘルプ)やデイサービスなどのうち、一定のサービスの自己負担額は控除の対象に含まれます。
  • 喀痰(かくたん)吸引など: 介護福祉士等による一定の喀痰吸引や経管栄養の対価も対象です。

3. 障害者福祉サービスの費用

 障害者福祉法などの規定に基づき、都道府県や市町村に納付する費用のうち、以下のものは医療費控除の対象となります。

  • 医師等の診療・治療に相当する費用
  • 通院費、部屋代、食事代、医療用器具の購入・賃借料などに相当する費用

 これらは、病院での治療費と同じ扱いとして認められています。

4. 介護における「おむつ代」の重要ポイント

 介護現場で欠かせない「おむつ代」も、条件を満たせば医療費控除に加算できます。

  • 条件: 傷病によりおおむね6か月以上寝たきりで、医師の治療を受けている場合に限られます。
  • 必要書類: 医師が発行した「おむつ使用証明書」が必要です。
  • 特例: 介護保険法の要介護認定を受けている一定の方は、市町村長等が交付する確認書等をもって「おむつ使用証明書」に代えることができます。

知っておきたい!医療費控除の有効な使い方

 医療費控除は、家族の中で一番所得が高い人がまとめて申告するのが節税のコツです。

  • 共働きの夫婦: 合算して、所得が多い方の夫(または妻)が申告すれば、還付される金額が大きくなる可能性があります。
  • 亡くなったご家族: 亡くなった後に親族が支払った未払い医療費も、支払った人の控除として申告可能です。

医療費控除の特例「セルフメディケーション税制」

 「医療費が10万円もいかないけれど、薬局で薬はよく買う」という方には、セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)という選択肢があります。

▶概要
 対象の薬(スイッチOTC医薬品等)を年間12,000円を超えて買った場合に、最大88,000円まで控除できます。

▶条件
 申告する本人が一定の取組(特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診など」を行っている必要があります。なお「一定の取組」が必要なのは、申告する本人だけです。生計を一にする家族の薬代を合算する場合でも、その家族全員が健診を受けている必要はありません。

▶注意点
 通常の医療費控除と併用はできません。どちらか有利な方を選びましょう。
 「一定の取組」にかかった費用(人間ドックの代金など)自体は、この税制の控除対象には含まれないので注意しましょう。

▶どちらが有利になりやすいかの判断基準
 支払った費用の内訳によって、どちらが有利になるかの傾向が分かれます。

 「通常の医療費控除」が有利な場合
 ・入院、手術、歯科治療(インプラントなど)で病院に支払った金額が高額なとき。
 ・家族全員分を合算して「10万円(または所得の5%)」を大きく超えるとき。

 「セルフメディケーション税制」が有利な場合
 ・病院にはあまり行っていないが、ドラッグストアで「スイッチOTC医薬品」などの対象薬を年間12,000円を超えて購入しているとき。
 ・通常の医療費控除の基準(10万円等)には届かないが、薬代が12,000円を超えているとき。

▶注意点

 家族分をまとめる:どちらの制度も、自分だけでなく「生計を一にする配偶者や親族」の分をまとめて計算できます。

 所得の低い人は要注意:所得が200万円未満の方は、通常の医療費控除のハードルが「10万円」ではなく「所得の5%」まで下がります。この場合、セルフメディケーション税制より通常の控除の方が有利になるケースが多いです。

 ・原則として選択のやり直しはできない: どちらかを選択して確定申告書を提出した後は、更正の請求や修正申告で選択をやり直すことはできません

よくある疑問・間違えやすいポイント

 Q. 領収書をなくしてしまったら?

 A. 医療保険者から送られてくる「医療費のお知らせ(通知)」があれば、それを添付することで明細の記入を簡略化でき、領収書も保存不要になります。ただし、通知に記載がない分は領収書が必要です。

 Q. 保険金をもらった場合は?

 A. 入院給付金や出産育児一時金などは、支払った医療費から差し引かなければなりません。
  ただし、引ききれない金額が出ても、他の(関係ない)医療費から引く必要はありません

 Q. 歯科ローンを使った場合は?

 A. ローン契約が成立した年(信販会社が立替え払いした年)の医療費として全額控除の対象になります。ただし、手数料や金利分は対象外なので注意してください。

手続きの流れチャート

  1. 領収書と「医療費のお知らせ」を集める(家族全員分)
  2. 「治療」にかかった費用かどうかを仕分ける
  3. 保険金などで戻ってきた金額を確認する
  4. 「通常の医療費控除」か「セルフメディケーション税制」か、有利な方を選ぶ
  5. 所得の5%か10万円、どちらが低いか確認する(医療費控除の場合)
  6. 「医療費控除の明細書」を作成して確定申告

まとめ

 医療費控除は年末調整では手続きできず、ご自身で確定申告(還付申告)を行う必要があります。会社員の方も、1年間の医療費をチェックして、還付される場合はしっかり申告しましょう。

 
 

※本記事は2026年1月時点の法令・制度に基づいて執筆しています。内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の事情に応じた法的助言を行うものではありません。万が一、記事の内容をもとに行動された結果として損害などが生じた場合でも、筆者としては責任を負いかねますこと、あらかじめご了承ください。

 

質問コーナーつきましては、「わかりやすさ」を第一に考え、次のことを心がけております。

専門用語をなるべく使わない
 ➡正しいけれど意味のわかりにくい言葉(税法用語など)を使わず、簡単な表現に言い換えてお伝  
  えします。そのため、専門家による専門家のための実務書とは表現が違うこともままあります
  
“超”がつくほど例外的なパターンまではあえて言及しない
 ➡あらゆるパターンを網羅してお答えしようとすると、回答が膨大な量になる恐れがあります。
  情報の多さに「で、結局答えは??」とゴールが見えなくなってしまわぬよう、まずは基本的なこと
  をシンプルにお伝えします

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