質問:大学生の子供がアルバイトをしています。いくら稼いでいたら親の扶養から外れるかを教えてください。
子どもが大学生でアルバイトをしています。
稼ぎがいくらまでなら、子どもが扶養から外れないです?
税金と社会保険の両方について教えてください。
答え:税金、社会保険ともに、150万円が壁となります。
大学生の年齢(19歳~22歳)の子供がいる場合の扶養についての質問です。
改正があり、税金・社会保険ともに【150万円】が壁となりました。
実務のポイントも踏まえて解説いたします!
「子どもがバイトでせっかく稼いでも、扶養から外れて親の税金が高くなっちゃう…」
「どれくらい稼いだら扶養から外れるの?」
税金や社会保険の「扶養」って、なんだか複雑で頭を抱えがちです。
ご質問にある大学生の年齢のお子さんの扶養については、改正でシンプルになりました。
今回は、その新しいルールを解説します。
そもそも「扶養」ってなに?
「扶養」とは、経済的に誰かを養っている(支えている)状態のこと。
税金と社会保険では、それぞれ少し意味合いが異なります。
○税金上の扶養(税法上の扶養)
お子さんを扶養していると、親の所得税や住民税が安くなる制度です。
親の税金を計算するときに、控除(税金が安くなる仕組み)が適用されるイメージです。
○社会保険上の扶養
お子さんが親の社会保険に一緒に加入できる制度です。
お子さん自身が健康保険料を払わずに医療を受けられます。
150万円の壁
本題の改正点です。2025年、大学の年齢(19歳~22歳)アルバイトの扶養事情が変わります。
○税金の扶養が大幅緩和:19歳〜22歳の子ども限定で、年収の壁が大幅アップ!
2025年から
年収150万円まで:MAXの控除を受けられます
⇒親はMAX63万円(所得税)/45万円(住民税)の控除を受けられるようになります。
これは、従来の103万円の壁と同じ金額です。
150万円超188万円まで:段階的に控除額が縮小していく仕組みが新設
○「勤労学生控除」の対象も150万円に!
お子さん自身が所得税を払う場合でも、「勤労学生控除」という制度を利用すれば税金が安くなります。
この制度の対象となる収入の上限も、これまでの年収130万円から150万円(合計所得金額85万円)に引き上げられます。勤労学生控除が適用されると、学生さん自身の所得税が27万円、住民税が26万円安くなる効果があります。
○社会保険の扶養も引き上げ(10月から)
2025年10月1日からは、19歳〜22歳限定で社会保険の扶養の壁も引き上げられます。
2025年10月から:年収150万円まで(従来は130万円)
★19歳~22歳については、税金と社会保険の壁が揃ったので、わかりやすくなりました。
★18歳と23歳以上は従来通りです。
共働き家庭、子はどっちの扶養に入れる?
共働きのご夫婦の場合、「どっちの扶養に入れたらお得なの?」という疑問がありますよね。
○社会保険の扶養
答え:年収が多い方(選択の余地なし)
2021年から明確なルールができました
•年収差が1割以上 → 年収多い方
•年収差が1割未満 → 主に生計を維持している方
○税金の扶養
答え:どちらでもOK(戦略的に選べる)
社会保険の扶養者と税金上の扶養者が異なっていても問題ありません。
一般的には「所得税率が高い方(=年収が多い方)」に入れると節税効果大。
どちらの扶養に入れるかを決めるときは、親の所得税率、他に使っている控除(住宅ローン控除など)、会社からの扶養手当の条件など、総合的に見て判断しましょう。
実務のポイント
子どもがアルバイトをしている場合、稼ぎによって影響が出る点がいろいろあります。
税金や社会保険以外のことも、注意が必要です。
①税金と社会保険で「いつ」「どう」判断するかが違う
税金の扶養:その年の1月1日から12月31日までの1年間の合計年収で判断します。
社会保険の扶養:原則として月々の収入で判断されます(例えば、月収125,000円以上の状態が3ヶ月連続で続くと、扶養から外れる可能性があります)。
②社保の扶養は10月前後で条件が変わる
9月まで:月収108,333円以下
10月から:月収125,000円未満
③ひとり親控除
ひとり親世帯の場合、お子さんが扶養から外れると「ひとり親控除」が使えなくなり、親の税金が増えることがあります。
④住民税の非課税
親が住民税非課税だった場合、お子さんが扶養を外れると、親に住民税が課税される可能性もあります。
⑤奨学金や多子無償化制度への影響
お子さんが利用している場合は、各機関に確認が必要です。
⑥バイトを複数している学生
扶養控除等申告書は「一番収入が多い職場」にだけ提出。2つの職場に出すのはNGです。
⑦親の会社の家族手当をチェック
会社独自の家族手当は「扶養に入っているか」で決まることが多いので、人事部に確認を。
⑧交通費も年収に含まれる(社会保険の判定)
「バイト代だけで150万円以下だから大丈夫」と思っても、交通費を入れたら超過することも。
⑨「あるある」失敗談
「バイト頑張りすぎて、月収が扶養の範囲を超えちゃった!」
→ただし、夏休みなどの一時的な収入増であれば扶養から外れない場合もあるので、親御さんが加入している健康保険組合に確認しましょう。
「18歳だから150万円まで大丈夫だと思ってた」
→今回の改正は、19歳以上22歳以下のお子さんが対象です。18歳は従来通り123万円まで。早生まれは特に注意です!
まとめ:19歳~22歳の子供収入、150万円がポイントです
2025年の税制・社会保険改正は、大学年齢のお子さんが扶養内でアルバイトをする上で、「稼ぎやすくなる」という変化をもたらします。
<ポイントまとめ>
18歳と23歳以上:従来通り
19歳〜22歳:年収150万円まで親の扶養に入れる。10月からは社会保険の扶養も150万円まで。月収12万5千円未満という条件もお忘れなく!
実務よもや話
実務ではなく、自分が19歳~22歳の頃のお話し。
私は学生ではなく、アルバイト生活をしていました。かけもちで働いていた時期もありました。
当時、まだ簿記も税理士の勉強もしておらず、もちろん税金やら扶養や年収の壁とやらの知識もなく、親にもいくら稼いでいるのか聞かれなかったと記憶しています。
税理士の仕事を始めて、扶養の範囲について意識するのが当然になっていますが、あらためて当たり前ではないこともある(特に子供の側から意識することは多くはないかも)ということを忘れないようにと思っています。学生さんが直接のお客様になることはほぼないですが、親側の年末調整や確定申告にて、しっかりと情報を伝え、確認をしていきます。親が子供の収入をはっきりと把握していないことも多々あります。あとから、「扶養を超えることはない、大丈夫と思っていたら、子供が思いのほか稼いでいたんです……」ということもありました。
2025年は改正で上限が変わることもあり、”去年と同じ”にして親の申告で損をしてしまうミスがないようにしましょう。
※本記事は2025年8月時点の法令・制度に基づいて執筆しています。内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の事情に応じた法的助言を行うものではありません。万が一、記事の内容をもとに行動された結果として損害などが生じた場合でも、筆者としては責任を負いかねますこと、あらかじめご了承ください。