【Q&A】領収書がない!クレジット明細だけでも大丈夫?

経費 否認 インボイス クレジットカード 質問BOX

質問:領収書がない…クレジット明細だけで大丈夫ですか?

  会社で必要なものは、法人カードを使って購入することが多いです。
  領収書がなくクレジット明細だけ、領収書や請求書を集めるのに手間がかかる、
  ということで悩んでいます。クレジット明細だけでは問題あるのでしょうか。

答え:クレジット明細だけでは不十分です。法人税(所得税)、消費税でそれぞれ痛手があります。

  クレジット明細は、領収書とは違います。
  経費計上をするために保存が義務付けられている根拠資料としては、不十分です。
  経費として認められない、消費税計算でもつかえない、といったWパンチです。
  基本は、領収書、請求書を保管すること。
  万が一保管ができないとなった場合は、代替資料を揃えて対応しましょう。

「現金管理の手間が少なくなった!でも、手元にクレカ明細しかない……。
 領収書がなくても経費になるんだっけ?」
キャッシュレスが進んでいる今、経理の現場では、こんな声がよく聞こえてきます。
経理担当者さん、経営者さん。今回は、その疑問について解説します!

「クレジットカード明細だけで経費計上していいの?」

 結論から言うと、NO
 基本的にクレジットカードの利用明細書や売上票だけでは、経費の証拠としては不十分です。
 なぜでしょうか?

クレカ明細は領収書とは違う
 クレジットカード払いは、その場で支払いが完結する現金払いとは違います。カード会社が一時的に立て替え払いをして、後日皆さんの口座から引き落とされる「信用取引」です。カード会社は商品やサービスの販売者ではないので、領収書は発行できません

取引の内容がわからない
 カード明細には「金額」は書いてあるけど、「何を買ったか」までは詳しく書かれていないことが多いで。たとえば「○○ショップで5万円」とだけ書かれていても、それが業務用なのか、社長のプライベート用品なのか、税務署は判断できません。結果経費として認められない可能性も出てきます

インボイス制度による影響
 消費税を計算する際に「インボイス(適格請求書)」が必要になりました。残念ながら、クレジットカードの売上票や利用明細は、このインボイスの要件(発行事業者の登録番号、税率ごとの消費税額など)を満たしていないことがほとんどです。つまり、カード明細だけでは消費税の計算で使えないことになります。

領収書がないと何が困る?法人税と消費税、それぞれの痛手

 領収書や請求書がないと、法人税と消費税、両方で困ったことになります。

① 法人税への影響:経費が認められないリスクあり
 クレジット売上票やカード明細だけしかない状態で税務調査になると、「これは経費として認めません」と言われる可能性があります。経費が認められないと、納めるべき法人税などの税額が増えてしまいます。さらに本税以外にペナルティを課される可能性もあります。

② 消費税への影響
 先ほど触れたインボイス制度の影響です。明細がインボイスの要件を満たしていない場合、その支払いにかかった消費税を消費税計算の際差し引くことができません。その結果、本来なら負担しなくてよかったはずの消費税を負担することになってしまいます

 つまり、領収書がないと、法人税と消費税のどちらも負担増というダブルパンチを食らう可能性がある、ということです。

領収書がないときの特例措置と、必要な対応

 領収書がないと経費計上を100%否認される……というわけではありません。領収書がないからなにも残しておかない、ではなく、代わりになる書類を用意して、経費計上できる可能性を高める対策をとっておきましょう

消費税の救済措置:領収書がいらないケース
 一部ですが、領収書がなくても消費税計算で控除が認められるケースがあります。

 ○中小事業者向けの「少額特例」(期間限定)
 中小事業者(ざっくり言うと、2期前の売上が1億円以下の会社など)の場合、1回の取引が税込1万円未満であれば、インボイスがなくても帳簿に記載するだけでOKです。これは2029年9月30日までの期間限定の特例です。

 ○公共交通機関や自動販売機など
 電車やバスなどの公共交通機関の運賃が3万円未満の場合や、自動販売機での購入、従業員に支給する出張旅費・宿泊費、そしてETC利用時の高速道路料金などは、インボイスの保存が不要とされています。帳簿に必要事項を記載しておけばOKです。

領収書等がないときの対策&代替資料リスト
 ・クレジットカード明細や銀行振込明細書
 ・電子取引(ネットショッピングなど)の「確認メール」や「注文画面のスクリーンショット」
 ・ICカード履歴
 ・領収書等の再発行依頼する
 ・出金伝票を残す

まとめ

① 領収書がない場合は、代わりとなる根拠書類(振込明細、メール、出金伝票など)を保管し、「いつ、どこで、何を、いくらで」を証明できるように工夫する。
② 消費税の控除には、インボイス要件を満たした領収書が必要。明細書では代用できないことが多いので注意。

 現金管理をなくすためにキャッシュレスをお勧めしていますが、キャッシュレスはキャッシュレスならではの、リスクや手間もあります。社長自身が経理をする場合も、経理担当者がいる場合も、カード決済の際に領収書や請求書をどう回収して保存するか、その業務フローを確立しておくと安心です

実務よもや話

 法人カードを使ったはいいけれど、領収書、請求書を回収できない……
 社長に催促しづらい……
 現場あるあるです。これはもう、仕組化するしかないですよね。
 法人カードを使う人、カード以外でも従業員立替など、経費精算の期日、やり方を統一する。
 経営者、全従業員統一して仕組みを作る。
 期日は早い方が良いと思います。自分もそうですが、時間が経つほどどこで何を買ったっけ?
 と資料を探すのに時間がかかってしまうので。

 また、クレジットカード購入の場合、複数書類があるので二重計上に注意しましょう。

※本記事は2025年8月時点の法令・制度に基づいて執筆しています。内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の事情に応じた法的助言を行うものではありません。万が一、記事の内容をもとに行動された結果として損害などが生じた場合でも、筆者としては責任を負いかねますこと、あらかじめご了承ください。

 

質問コーナーつきましては、「わかりやすさ」を第一に考え、次のことを心がけております。

専門用語をなるべく使わない
 ➡正しいけれど意味のわかりにくい言葉(税法用語など)を使わず、簡単な表現に言い換えてお伝  
  えします。そのため、専門家による専門家のための実務書とは表現が違うこともままあります
  
“超”がつくほど例外的なパターンまではあえて言及しない
 ➡あらゆるパターンを網羅してお答えしようとすると、回答が膨大な量になる恐れがあります。
  情報の多さに「で、結局答えは??」とゴールが見えなくなってしまわぬよう、まずは基本的なこと
  をシンプルにお伝えします。

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