質問:従業員が会社備品をカード立替えで買ったら、インボイスの関係で面倒だと聞きました。どう面倒なのでしょうか?
会社の備品を購入したのですが、仮払いのお金がなくて、臨時で自分のカードで立替えて
払いました。従業員がカードで立替えると面倒だと聞いたのですが、会社としてはどう処理
したらよいでしょうか?
答え:受取った領収書等の種類によって、面倒になる場合も出てきます。
会社の経理担当者の方からの質問です。
従業員が立替えた場合のポイントは、『請求書の宛名が誰になっているのか?』です。
インボイス制度がはじまって、今度の10月で2年経ちます。
従業員立替の際の対応を、あらてめてまとめてみます。
そもそも、なぜ立替えると面倒になるのか?
・精算の手間(従業員が会社に領収書等を提出し、精算書を作成)
・インボイスの対応(立替金請求書の作成)
が必要になるためです。特にインボイス制度の影響が大きいです。
では、免税事業者なら面倒ではないのでしょうか?
免税事業者の場合、消費税の計算を行わないので、インボイスの管理が不要です。
そのため、以下の点で事務処理が簡単になります。
・適格請求書の有無を気にしなくてよい
・立替精算書の作成が簡略化できる場合がある
とはいえ、免税事業者でも精算業務は必要なので、手間がまったくないわけではありません。
では、インボイス管理の面における対応について、面倒になる場合と、ならない場合をまとめてみます。
面倒ではない場合(立替金精算書が不要なケース)
①インボイスの宛名が会社名で発行されている場合
⇒この場合、会社はそのインボイスをそのまま消費税の計算で使えます。
②従業員が宛名なしの簡易インボイスを受け取った場合
簡易インボイス(小売業・飲食店など、顧客が不特定多数の者の事業者が発行できる簡易なインボイス)は、通常のインボイスと異なり、宛名を記載する必要がありませんので、宛名が会社名でなくてもそのまま消費税の計算で使えます。
③簡易インボイスで宛名が従業員名の場合
簡易インボイスに従業員名で宛名が入っている場合は、会社が「従業員名簿等」を保存することで、立替金精算書の作成は不要となる場合があります。この場合、会社は簡易インボイスと従業員名簿等を保存することで、消費税の計算で使えます。従業員名簿は、在職者だけでなく退職者の名前も載せて、事業年度ごとに更新しましょう。
うーん‥‥これは、どちらかというと面倒な場合の方になりますね。もし簡易インボイスに宛名を入れる必要がある場合は、会社名(事業者名)にしてもらいましょう。
④法人カードで決済した場合
会社名義のカードで支払えば、従業員の立替ではなく、会社の直接支払いとみなされるため、インボイスの宛名が従業員名でも、立替精算書を作成しなくても会社の経費として処理できます。
⑤取引先が免税事業者である場合
インボイスが発行されないので、立替金精算書を発行する必要はありません。
少々、面倒な場合(立替金精算書が必要)
○もらったインボイスの宛名が従業員個人の場合
(従業員個人のIDでネット購入、個人のクレジットカードで購入した場合など)
インボイス(簡易ではなく通常のインボイス)の宛名が個人だと、そのインボイスのみでは消費税の計算で使えません。その場合、原則として「立替金精算書」を作成・保存する必要があります。従業員に立替金精算書を作成・交付してもらい、発行されたインボイスと一緒に提出することで、消費税の計算に使えます。
参考:立替金精算書に記載する事項
立替金精算書には決まった雛形はありません。
以下の内容を盛り込んだものを作成してください(従業員が会社宛てに発行する)。
①宛先…経費を支払う会社名
②発行者…立替えた従業員の情報
③支払先・登録番号…経費の支払先(販売者)名とインボイス登録番号
④支払日…支払いを行った日付
➄支払内容…購入した商品やサービス名など
⑥税率…消費税の税率(10%か8%か)
⑦支払金額…支払った金額
⑧税額…消費税額
⑨軽減税率…支払いが軽減税率の対象品であるか否か
⑩合計金額・合計税額…税率ごとの支払金の合計と消費税額の合計
結論:なるべく立替はしない
質問者の方は、致し方なく、緊急で立替えたということでした。
やはり、経理担当者として立替をしたら手間がかかるという意識は強かったようです。
立替をしないようにするためには、
・従業員に前もってお金を渡す(仮払いをする)
・法人カードを作る
立替えた場合は、
・宛名なしの簡易インボイスor会社宛のインボイスを発行してもらうことを徹底する
実務よもや話
長いお付き合いのある会社の経理担当者の方のお話しを聞くと、
立替経費精算(社長、従業員)については、かなり苦労があるのを感じます。
請求書、領収書等の回収がなかなかできない(特にカード払いや、ECサイトでの購入)。
提出の呼びかけがしづらい……。時間が経てばたつほど不明のものが増えていく。
大企業のような生産システム導入が難しい。
システムを作っても、それを周知させて使ってもらうように持って行くのが難しい……
税理士事務所からの問い合わせと、立替者の間には挟まれてもう大変、ということも。
税理士(社外の人)がシステムに関して提案したとしても、実際に使う人(社内の人)がそのシステム自体を面倒と思ってしまったら、どうにならないなと思います。
結論として「なるべく立替はしない!」といっても、これまた社内事情でそうもいかないことあります。
立替精算は、インボイス云々関係なく、古くて新しい問題ですよね。
私はひとり事務所なので他者の立替はないですが、自分で買ったものでさえ時間が経つとわからなくなったり、紙の領収書などは行方がわからなくなることが多々あります。とにかく購入したらその場で、もしくはその日のうちに記録に残し(エクセルなり会計ソフトなり)、保管すべきものは所定の場所に保管するようにしています。
※本記事は2025年6月時点の法令・制度に基づいて執筆しています。内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の事情に応じた法的助言を行うものではありません。万が一、記事の内容をもとに行動された結果として損害などが生じた場合でも、筆者としては責任を負いかねますこと、あらかじめご了承ください。